※学パロです。双子設定じゃないです。
鞄に弁当を急いで詰め込む。学年上がって、初日の今日。いつもよりも遅い時間に起床。つまりは遅刻。初日から教師が壇上の上で話している内に、ガラガラと扉の音を立てて入るなんて勘弁すぎる。
(早く、早く学校に行かないと…!)
用意された朝食をパンだけ、手に持ち、家から駆けていく。二親からの「行ってらっしゃい」なんて、科白が聞こえてきたけれど、ドアの閉まる音によってかき消されてしまった。
息を切らして転ばないようにバス停のある所まで走る。新しく卸したローファーを汚れないよう、汚れないよう細心の注意を払って。バス停までの距離が程遠く、長く長く感じる。坂の先ではいつも使うバスが通りすぎるのが見える。後、少しの距離。坂を降りきったら後はもうバス停だ。
(ま、間に合ってッ…!)
自分の持てる力を最大限に利用して、足を駆ける。坂を降りきって、角を曲がろうとした瞬間、衝撃が自分を襲ったのと同時に水しぶきが上がった。
「イタタ…」
思い切り顔面からぶつかり、鼻を押さえる。もう学校初日から全くついていない。取り敢えず謝ろうと顔をあげると"彼"が振り向いた。
そこからはまるでスローモーションのよう。
思わず持っていた鞄を落としてしまった。振り向いたのは一瞬だったのに、本当に、ゆっくりと時が流れたかのようだった。自身と同じ黄色い髪の毛。瓜二つかと思う位にそっくりな顔。…どう言葉を発して良いのかわからない。
ずっと、見惚れていると目の前の"彼"の視線の先―――びしょ濡れの靴。はっと、我に返る。
「ご、ゴメンッ!…怒ってるよね?」
咄嗟に言葉をつむいだせいで思わず早口になってしまう。行きなりぶつかって、しかも見惚れちゃうなんて只の変な人にしかすぎない。彼はやれやれと面倒くさそうな顔つきで水浸しの鞄を差し出した。
「下向いて、走るなよな。鞄は落ちないようしっかり持てよ」
「あ、ありがとう!!」
彼から受け取った鞄を両手で抱き締めるかのようにしっかりと持つ。さっきから心臓がドキドキして止まない。…コレは…もしかしたら―――。背を向け、歩き出した彼のセーターをきゅっと、小さく掴む。
「あ、あの、名前、なんて言うの!?」
「レン。お前は?」
First Day
(もしかして運命の出会い?)
元ネタ;その一秒のスローモーション@supercell
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