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P3*主人公←ゆかり

2011-03-18 15:44

そわそわしながら、寮のラウンジのソファに腰を下ろす。期待していることを隠す為に、必死で女性向け雑誌に視線を送る。だけど、雑誌の内容が頭の中に流れ込んでこない。いつもだったら、可愛いポーチや春の新作のトップスやスカートを見て、これからのコーディネートをどうするか、悩みながら雑誌を眺めるというのに。<br>
ゆかりが、何故、ここまで動揺するのかには理由があった。


一つ目の理由は、先月の14日まで、時を遡る。先月の14日、つまり2月14日は所謂、バレンタインデーと呼ばれる日であって、ゆかりは湊の為にチョコレートを用意してあった。だが、いつも有り余るくらいの勇気は、その日に限って、中々、奮ってくれなく、ゴミ箱行きになりかけた。しかし、その時、ゆかりが捨てようと伸ばした手をアイギスがその手を阻んだ。


「ゆかりさん、これをどうなさるつもりですか?」
「どうって…、いらなくなっちゃったから捨てるだけだよ」
「…湊さんの為に用意したんじゃないんですか」
「っ…そ、そうだけど…、」


アイギスは機械の性質上からなのか、"心"を持った以降も"人"の観察を良く行っていた。それ故に、ゆかりが湊に恋心を抱いているのも必然的にアイギスに知られてしまった。
アイギスはゆかりが捨てようと伸ばしてた手を両手でそっと、包み込んだ。


「心を込めて、作ったのですから、ゆかりさんの手で湊さんに渡すべきです」


ゆかりは、アイギスの一押しがあってか、無事、湊にチョコを渡した。当の本人は、もらえると思ってもいなかったのか、一瞬、驚いた表情をしてみせたが、直ぐにいつもと変わらない無表情で、ありがとうと述べた。<br>
だから3月14日のホワイトデーは必然的に意識してしまう。湊の性格から考えて、お返しを貰う確立は低いとは思うけれど…。


そして、二つ目の理由は、その有里湊が自身の隣に座っているからだ。3人がけソファなのに、わざわざ隣に座っている。このソファに2人で座る場合、大抵は1人分空けて座るのが暗黙の了解だというのに。緊張してしまって、隣に座る湊のことが全く見れない。視界にも映せなく、無意識に湊が居る方向とは反対の方向を向いてしまう。


― もう、駄目…、


そう思って、ぎゅっと目を瞑ったのと同時に、湊がクスクスと笑う声が耳に届いた。


「岳羽、雑誌のページ、全然、進んでないよ」
「え…?」
「緊張してる岳羽を見るのも、面白かったけど、はい、コレ」


湊の方を向いた途端、差し出された白い箱。ピンクのリボンで包まれている。それが何なのか理解するまでに軽く10秒近くかかった。だが、自分がからかわれているという事を知って、急激に頬が熱くなってくる。


「あ、あるんだったら、早く渡してよねっ!」


湊の手から半ば、もぎとる様な感じで、受け取り、駆け足で階段を上がり、自身の部屋へと急ぐ。勢い良く、ドアを開けて、思いっきりドアを閉めた所為か、バタンとした音が鳴り響く。
息を切らしながら、閉めたドアに寄りかかり、手中にある白い箱を見つめる。


― 用意…しててくれたんだぁ…


ゆかりは、胸の前でぎゅっと白い箱を抱きしめた。


偶には焦らしてみようかな
(なんてね、…君の笑顔が見たかったんだ)
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