彼と同棲し始めて約半年。
学園を卒業した後、自分等は一旦故郷へ戻りまた自分等が出会った此処(東京)で再会し―――。
社会に出て、それなりに上手くいっている方だと思う。
毎日楽しい職場で働いて、毎日大好きな彼と居られて、とても幸せ。
会う時間は学生時代よりは多くとれないけれど、それども幸せなんだ。
逆に幸せ過ぎて怖い位に。
でも、不安な点がある。
同棲を始めたのも、成り行きだったし第一、同棲はしたのはいいものの婚約だとか結婚だとかの話は彼は一切切り出さなかった。
幸せだから良いけれど―――。
そんな毎日が続いて、季節は冬になり、クリスマスがやってきた。
どこそこクリスマス色になり、陽気な音楽が流れている。
閑散とした部屋の中で、少し奮発して買ったチキンを調理して、手作りながらも一生懸命作った甘さ控えめのケーキ。勿論上には苺をたっぷりのせて。
丁寧に愛情を込めた夕飯の準備が終わり、後は彼を待つだけだと思った刹那。
ガチャリとドアが開く音がして、エプロンを付けたまま玄関へと向かう。
向かった先には、微笑していた彼が居て、思わず此方も笑ってしまった。
「悪かったな、クリスマスプレゼントも買えなくて」
「えぇんよ、別に!!」
クリスマスのご馳走を食べ終わり、不意に彼が申し訳なさそうに謝ってきた。
自身はプレゼントなんてなくても彼と一緒に居られるだけで幸せだからそんな事は一々気にしていない。
それに。
「これ、あるやん!」
そう言って差し出したのは彼がコンビニで買ってきたプラスチックの大きな靴下の入れ物。
その中には大量にお菓子が入っていて、これがまた意外に美味しい。
ご馳走もケーキも食べたと言うのに、お菓子も食べる自分に彼は若干呆れた目をしているが、でも優しい目をしていた。
「そうだな」
「そやろー!折角アンタが買ってきてくれたんやしな!
あっ、もう最後のお菓子や」
靴下型のケースの奥底に手を出し、手探りで最後の箱を取り出すと、そこには無地の赤色の箱があり、開けてみると、立方体の箱がまた入っていた。
不思議に思って、その立方体の箱を開けると、トップに綺麗なダイアモンドが付いた指輪が入っていた。
余りにも予想外な事で開いた口が塞がらない。
呆けた顔で彼の顔を見ると、彼は真剣な顔をしていた。
「ずっと、言おうと思ってたんだが…結婚しよう」
「……っ、アンタにしては回りくどいわ」
「お前を驚かせようと思ってな」
「普通、誰でもプロポーズされたら吃驚するわ…」
「で、返事は?」
「勿論、決まってるやろ」
今まで不安だったのが今の出来事で一瞬で吹っ飛んだ。
もう、嬉しすぎて幸せすぎて涙が出てきた。
思わず彼に寄り添うと優しく抱き止めてくれた。
サプライズ・イヴ
(驚いて嬉しくて、一緒に笑うんだ)
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