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こばなし
むしゃむしゃと音を立てながら、ポッキーを食している。雑誌を読みながら、左手はページをめくり、右手はポッキーを持っている。手中にあるポッキーが口へと消えると、また手をポッキーが入ってる袋へと入れる。それを何回も繰り返している。しかも、視線は雑誌から外さないで手探りでポッキーを手にとって、食べる。
暫くの間、じーっと、そんな彼を見つめているけれど、1回も此方を見ようとしない。彼に構ってもらえなくて、ちょっぴり寂しい。それと同時に腹が立ってきた。
ちょっと悪戯してみようと、ポッキーが入ってる箱を手に取り、自分の後ろへと置き、隠す。彼が1本のポッキーを食べ終わると、手を伸ばす。だが、あると思った場所になくて、手探りでポッキーの箱を探す。それでもやっぱり、見つからなく、棗は顔を上げた。
「蜜柑、何処にやった」
「…ウチの相手してくれへん人には教えませーん」
つーんと、そっぽを向く。棗も少しは困れば良いんだ。
11月11日。ポッキーとプリッツの日で、セントラルタウンに行った時、勢いで沢山買ってしまった。特力で全部、食べ切れなかったので、余った分を棗にプレゼントしようと、折角、訪ねたのに、彼は貰うなり―――。
棗は雑誌を横に置くと、蜜柑に近寄る。そして、いとも簡単にポッキーを奪った。最初はそっぽを向いていて、分からなかったけれど、カサカサという物音を聞いて、奪われた事に気付く。
「ちょ、なつめ、」
刹那、振り向くなり、口の中にポッキーを入れられた。どう対処して良いか分からず、取り敢えずポッキーが落ちない様に銜える。すると銜えていないもう片方を棗が口に銜える。至近距離に棗の顔があり、見て入れられなくなり目を瞑る。耳に聞こえてくるのはサクサクとポッキーを食べる音。そして、段々と気配が近づいてくる。
目を開けようと思った刹那、唇同士が触れ合った。何事かと思い、目を開けて後ろへ後退しながら離れる。
「いっきなり、何すんねん!!」
「何って、お前、…構って欲しかったんだろ」
「な、つめのアホーッ!!」
棗に背を向ける。嗚呼、もう今、後ろにいる棗は口角を上げて笑っているだろう。もう何だか、彼に構ってもらって嬉しいのか、行き成りキスされて悔しいのか分からない。でも、結局は…、嬉しくて堪らないのだ。この感情を押さえ込もうと、頬を染めながら口に残ったポッキーを飲み込んだ。
ポッキー・ベイベー
(残ったのは嬉しさとチョコ味)