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こばなし
どうして、そんなにためらっているの、と、視線で訴えようとしても、貴方の目は私を捕らえていなかった。手袋、マフラー、コート、全部放り投げて、私を押し倒している貴方。
夜のベットは、とても冷えていて背中が、凄く冷たい。
「やらないんですか?」
彼の口は閉ざしたまま。それでも、私の視線は彼を見据えていた。
冬の街で、久しぶりに彼を見かけた。でも、その姿は、自身が思い描いていたような"彼"ではなかった。まるで、初めて会った時のような―――。
そんな彼を見て、放っておけなかった。気づいた時には、もう駆け出していた。そして、ぎゅっと優しく抱きしめた。彼は最初、何が起こってるかわからない様子だった様に見えたが、段々と事態を飲み込んで、背中に腕を回してくれた。
「どうしたんですか?」「何かありましたか?」と、何回も訊いても彼は開口しようとしなかった。だが、「私の部屋に来ませんか?」と訊くと、彼は小さく頷いた。彼のおもい背中を支え、何とか自身の部屋に着いた瞬間、行き成りドアを開けられ、押し倒された。そして、今に至る。
この状態のまま、どれだけの時間が経ったのだろう。1分かもしれないし、10分かもしれない。でも、自身にとっては、とても長く感じられた。
刹那、彼が、自身の髪の毛をやんわりと触れた。そして、聞き慣れたアルト声が耳に届いた。
「…自分が、何されるか分かってるの?」
「分かってますよ。これでも、オトナになりましたから」
「君は、まだまだコドモだよ」
そんな彼の言葉にカチンとくる。それと同時に悲しくなる。晴れて、付き合えるようになったのに、こういう時、まだまだ彼と自身の間には溝があるんだと痛感する。
彼は、入り込まない人だから、自身から入り込んでいかなければいけない。だったら―――。
「好きにしてくださって、かまわないですよ?」
そう言いながら、少しだけ体を起こして彼にキスをする。暗闇に慣れた瞳は、しっかりと彼の顔を捕らえた。
呼吸すら忘れるほど、
(あなたを捕まえたいの)